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  • iPS細胞、チェ・ゲバラ、「虚構」と「現実」

    Posted on 2月 8th, 2009 Yohei No comments

    書こうと思って溜めていたトピックを3つ取り上げます。

    ひとつ目は、iPS細胞。

    2007年にヒト線維芽細胞からのリプログラミング(初期化)が確立されて、2008年には、ALS(筋委縮性側索硬化症)患者からのiPS作成が報告されました。まさに、iPS細胞はこれから応用に向けて研究がはじめられているわけですが、このたび、薬の毒性試験にiPS細胞が利用されることになったとのことです。僕は、このまえ安田賢二教授の講演を聞いたのですが、安田教授のグループはナノ生体計測技術で世界トップレベルの実績を上げています。具体的には、心筋細胞が特殊加工されたプラスチックの回路で培養されて、ネットワークを作り、自発的に拍動を始めるのです。神経細胞のネットワーク作成も研究しているのだそうです。

    ふたつ目は、チェ・ゲバラの2本立て映画の後編「39歳 別れの手紙」を見たこと。公開されたばかりなので内容には詳しく触れすぎないようにしたいのですが、「(今年)見るべき映画」に挙げられていただけのことはあったと思います。スティーブン・ソダーバーグ監督。べニチオ・デル・トロ主演。映画はじまったと思って見ていたら、ひたすらスペイン語だったので少々面喰ってしまいましたが。チェがボリビアに密入国して、ゲリラ部隊を構えて、傀儡政権を打倒するべく森の中に潜伏するというストーリーです。チェ・ゲバラ役のベニチオ・デル・トロの真に迫る演技が良かったです。僕は、チェ・ゲバラに関しては、Tシャツの図柄で使われていることと、カストロ議長と関係があることくらいしか知らなかったのですが、映画を見ていて、どうやら医者らしいこと、とても賢くて人情深い人物だということ、パイプを燻らせるのが好みらしいこと、行動によって理想を実現しようとしていることが伝わってきました。映画は「ゲバラ日記」に基づいて作られているらしく、DAY ○○○という感じで進められていきました。ゲバラ日記については、松岡正剛氏の千夜千冊で詳しく解説されています。少々長かったですが、面白かったのでぜひご覧ください。

    みっつ目は、「虚構」は「現実」である。ラカン派(ただし精神分析は治療に用いていない)で、引きこもり、オタク、アニメ、サブカルに詳しく、『文脈病―ラカン・ベイトソン・マトゥラーナ』の著書がある精神科医、斎藤環氏のWEB連載について。僕は、けっこう前から斎藤環氏のファンで、難解すぎることで有名なラカンをしっかり解読していてすごいなあと尊敬しているとともに、現代美術(海外ではヘンリー・ダーガー)への造詣も深く、それでいて漫画に対する情熱も強くて、この人はいったい何者なんだろうと思ってフォローしているわけです。昔から精神科医という職業にけっこう憧れていたこともあり、でも脳科学も面白いからと目移りしているのですが、斎藤氏のような精神科医は他にはいないでしょう。WEB連載面白いのでこちらもご覧ください。

  • 倫理観が試されている

    Posted on 5月 10th, 2008 Yohei No comments

    One tear…, originally uploaded by gunnisal.

    今回は、神経倫理=Neuroethicsの話。イリノイ大学の行動経済学者のMing Hsuたちが行った研究がSCIENCE EXPRESSに掲載されています。「重大な決断をせまられたときに、人はどのような選択を取るのか」というテーマに基づいて、fMRIで脳の活動記録をモニタし、解析するという手法をとっています。学問的にいうと、社会的意思決定(Social Decision-Making)の範囲に入ります。

    さて、Hsu氏たちが行った実験ですが、こんな具合です。26名のVolunteerに、ウガンダの実在する児童養護施設のこどもたちに食べ物を寄付することになった旨を説明する。60人のこどもたち一人一人に24回分の食事を寄付したい。ところが、寄付する予定だった数回分の食事がどこかへ行ってしまった。なので、あなた=Volunteerにその配分を決めていただきたい。決め方は、次の二通りです。

    1)一人の子供Aにだけ、X回分の食事を食べさせない。

    2)二人の子供(BとC)に、Y回分の食事を食べさせない。

    たとえば、1)では一人の子供が15回食べられず、2)では二人の子供がそれぞれ8回ずつ食べられないという選択を設定します。少し考えればわかりますが、この場合、2)の選択の方が、より「良い」選択であるといえます。実際、ほとんどすべてのVolunteerがこちらを選択しました。ところが、二人の子供が食べられない食事の回数が多くなると興味深いことが起きました。

    ※途中です

    ここから再開↓

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  • Final Trip

    Posted on 5月 4th, 2008 Yohei No comments

    今回もサイエンスの話を取り上げてみますが、かなりサイケデリックな方向に傾いています。先月29日、LSDを世界で初めて合成し、LSDによる幻覚を世界で初めて体験した、スイスの合成化学者、アルベルト・ホフマン博士が亡くなったそうです。死因は心臓発作。享年102歳。

    ホフマン博士は、1938年にLSDを合成していたのですが、LSDのもつ幻覚作用を見出したのは、それから5年経った1943年でした。その年の4月16日、たまたま指先に付着した微量のLSDを摂取してしまい、博士は眩暈を感じました。眩暈が本当にLSDによるものかどうかを確かめるため、博士は自分の体をつかって実験をすることにしました。4月19日、博士はLSDを0.25mg摂取し、助手に自転車を持ってこさせ、自転車に乗って家に帰ることにしました。家に帰る途中、博士は視界が万華鏡のように変転するのを感じたそうです。LSD信奉者たちは、この日を記念して、”Bicycle Day”とよんでいます。

    自分が作り出してしまった、未知の物質を自分の体で試してみる、というのは、ふつうの合成化学者はやりたがらないし、やろうとは思わないでしょう。というのは、有機化合物は、大部分が生体にとって有害だからです。それを知っていて、あえてやってみるという、ホフマン博士の無謀で冒険的な行動は、評価されるべきでしょう。

    先のNY Timesの記事にあったホフマン博士の言葉。

    “Through my LSD experience and my new picture of reality, I became aware of the wonder of creation, the magnificence of nature and of the animal and plant kingdom,” Dr. Hofmann told the psychiatrist Stanislav Grof during an interview in 1984. “I became very sensitive to what will happen to all this and all of us.”

    ところで、LSDといえば、カウンターカルチャーが隆盛を極めていた1960年代、一世を風靡した幻覚剤として有名です。ライ麦などに寄生する麦角菌(Ergot)が生成する麦角アルカロイドから半合成されます。

    LSD - 3D structure
    画像:Image:Lsd.pdb.gif – Wikipedia

    上の画像は、LSD(Lysergic acid diethylamide)の三次元立体画像。WikipediaのLSDの項目は、非常によく書かれています。

    ホフマン博士は、サイケデリックな1960年代に、ティモシー・リアリーや、アレン・ギンスバーグ、そしてオルダス・ハックスレーという面々と友人関係にあったらしく、作家や芸術家をはじめ、LSD愛好者から慕われていたことがうかがえます。

    こちらは、ティモシー・リアリー。”Turn On, Tune In, Drop Out”の呼びかけ。

    こちらは、オルダス・ハックスレー著の”Brave New World”です。近未来的ディストピア。

    クスリ(DRUG)のもつ作用は、一般的にいって、強烈です。この事実は、ヒトの体が、イオン・低分子と高分子化合物から成り立っているという何よりの証拠です。だから、人間の精神活動や知的活動も、物質的基盤がなければありえないわけです。Psycho-Physio-Pharmacoという、三つのP(一つのΨと二つのΦ)は関係が深いんですね。

    それにしても、一つの化学物質が、人々の生活や文化や創造性、さらには死生観まで変えてしまうとは、不思議ですね!!

  • earworm もしくは 頭の中の音楽

    Posted on 4月 19th, 2008 Yohei No comments

    頭の中の音楽

    先日、大学の講義室で、ふと、頭の中で音楽が流れた。スピーカーなどの機器からではなく、空耳でもない、いわゆる脳内再生というやつだ。流れたのはこの曲。

    Ordinary World

    その曲は、Duran Duranの”Ordinary World”(1993)だった。

    はじめ曲が頭の中で流れて→あー、この曲6,7年前に洋楽HIT集で聴いたことがあるな、と思い→たしか、”Ordinary World”という曲名だったな。というところまで思い出した。それから、Googleで曲名を検索したら、Duran Duranの曲だということがわかった。Duran Duranは、1978年にデビューした、イギリス・バーミンガム出身のバンド。現在も活動中というのがすごくて、昨年はLive Earthにも出演している。いかにも80年代ロックという感じで、ゆったりしている。以下は歌詞の一部。


    But I won’t cry for yesterday
    There’s an ordinary world
    Somehow I have to find
    And as I try to make my way
    To the ordinary world
    I will learn to survive

    こちらは、デビューシングルの”Planet Earth”。いま聞くと、すごく新鮮で率直な印象だ。

    earworm

    ところで、日本語で脳内再生と俗に言われている現象に、しっかりした名前はないのかと疑問に思った。ふたたびGoogleで検索したところ、”earworm”と呼ばれるらしいことを知った。earwormはドイツ語のOhrwurmを訳したものらしい。

    2003年に、University of CinCinnatiのJames Kellarisの研究グループが、earwormに関する研究を報告している。

    心理学や認知神経科学で扱える対象の範囲が、かなり広がってきたように思う。

  • 喉まででかかる

    Posted on 3月 29th, 2008 Yohei No comments

    顔は知っているはずなのに、その人の名前が思い出せないことを一度は経験したことがあるかもしれない。

    心理学の世界では、このような現象を”Tip-of-the-Tongue Phenomena”とよんでいるらしい。舌の先という意味。略してTOTs(なんか顔文字みたいだ)。日本語では、「喉まででかかっているのに思い出せない」という表現になる。私たちの記憶というのはある意味正確無比だけれど、言葉で表現しようとすると、突如としてうまくいかないことがある。言葉を使うということは、きっと相当な労力を要するのだろう。

    TOTs

    Wikipediaの“Tip of the tongue”の項目にリンクされていたcartoon。アメリカの漫画には、一コマだけですべてを語る的なものがある。画力は別として、すごく知的だし、詩的で面白いと思う。