9 月 07
少し手が空いたので、手元にあった詩集から詩を引用します。
その詩
その詩をよむと詩が書きたくなる。
その詩をよむとダイナモが唸り出す。
その詩は結局その詩の通りだ。
その詩は高度の原の無限の変化だ。
その詩は雑然と並んでもゐる。
その詩は矛盾撞着支離滅裂でもある。
その詩はただ奥の動きに貫かれてゐる。
その詩は清算以前の展開である。
その詩は気まぐれ無しの必至である。
その詩は生理的の機構をもつ。
その詩は滃然(をうぜん)と空間を押し流れる。
その詩は転落し天上し壊滅し又蘇る。
その詩は姿を破り姿を孕む。
その詩は電子の反撥親和だ。
その詩は眼前咫尺(しせき)に生きる。
その詩は手厳しいが妙に親しい。
その詩は不思議に手に取れそうだ。
その詩は気がつくと歩道の石甃(いしだたみ)にも書いてある。(『猛獣篇』、高村光太郎)



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